「俳優を辞めてから始まる人生｜映画『すとん』が教えてくれること」

映画『すとん』とは？

2025年8月に公開予定の映画『すとん』。
SNSでは「ルート29って映画知ってる？」という形で徐々に話題が広がりつつある、注目のインディペンデント作品です。

本作の監督・脚本は、かつて俳優として活動していた渡邉りか子さん。
主演を務めた『グラフィティ・グラフィティ！』から数年、今回は初のメガホンを取り、自らの体験をにじませた静かな物語を描いています。

この記事では、映画『すとん』のあらすじ・ロケ地・評価ポイントを深掘りし、
「なぜこの作品が“すとん”と心に落ちるのか」を考察していきます。

あらすじと作品の世界観

『すとん』は、東京で俳優として活動していた女性「さえ」が主人公。
コロナ禍をきっかけに俳優を引退し、新しい生活を始めた彼女が、地方での人との出会いや、自分自身との向き合いを通して変化していく姿が描かれます。

物語の大半は、派手な事件や急展開は起きません。
むしろ「何気ない日々」「他人の言葉」「親の老い」――そんな日常の小さな出来事が、静かに彼女の内面を揺らしていきます。

タイトルの『すとん』は、まさにその瞬間を表す言葉。
言葉や感情が、理屈ではなく“腹に落ちる”。
自分の人生がやっと受け入れられる瞬間。
そうした感覚が、画面を通じて観る者にもじんわりと伝わってくる作品です。

観終わったあと、「これでいいんだ」と思わせてくれるような、
心にじわっとしみ込む映画。それが『すとん』の世界観です。

ロケ地・撮影背景について

映画『すとん』の舞台は、都市部ではなく地方の静かな町。
派手な観光地やシンボリックな景観ではなく、どこにでもありそうな街角や住宅街が多く登場します。

特に印象的なのは、「田舎のバス停」「商店街の一角」「昔ながらの家屋」など、
“昭和の面影”がわずかに残るような場所での撮影。
その風景が、主人公さえの「止まっていた時間」や「忘れられていた感情」を自然に引き出しています。

実際のロケ地情報としては、兵庫県姫路市周辺や、鳥取県ルート29号線沿いという情報も。
映画ファンの間では「“ルート29”ってそこから来てるのでは？」という憶測も出ています。

映像は全体的にナチュラルライティングで、まるでドキュメンタリーのような質感。
「場所」と「空気」と「人」の関係性で魅せる作品です。

評価・感想のポイントと筆者の視点

2025年7月時点ではレビューは少ないものの、映画祭や試写会では好意的な反応が多く見られます。

• 静かな描写と内面の変化を丁寧に追った構成
• 演技の“しすぎなさ”がむしろリアルと好評
• カットの余白や間（ま）の演出が心地よい
• 作為的なBGMがないからこそ生まれる“生活音”のリアリティ

筆者の個人的な感想としては、この映画は「観る人を選ぶタイプ」ですが、
逆に「忙しすぎて心がカサついている人」には、まさに今必要な作品だと感じました。

タイトル通り、最後のラストシーンで“すとん”と腹に落ちる感覚が残ります。

まとめ：どんな人に刺さる映画か？

映画『すとん』は、何かを成し遂げる物語ではなく、
「人生を一歩、受け入れる」ための物語です。

何かを始めたけれど、続けられなかった人。
夢を追いかけていたけれど、途中で降りた人。
日常の中でふと、「これでよかったのかな」と感じたことがある人――

そんな人に、静かに寄り添ってくれる映画です。

観終わったあと、何も語らなくても、
「ああ、わかる」と目を伏せてしまうような静かな感動。

『すとん』は、そんな体験を届けてくれる作品だと感じました。